契約まで 契約まで
第五週目 (めまぐるしい六週間)

2005年5月8日の週

 豊橋のハイム工場見学
「工場をぜひ見て下さい」との西山さんの提案でハイムの工場を訪問した。
広い敷地に、巨大な工場があった。予想以上に大きな工場だ。
コンベアの上をユニット単位で家が流れている。家というよりも工業製品だ。
部材一点ごとに施主の名前が貼られている。 これなら均一の品質を保てると感じる。
物件ごとに部材を変えるなんてこともない。
工務店が現場で造る家は、予算によって部材を変えたり手を抜いたりすると聞く。
しかし、ハイムではそれはあり得ない。 また家の内部が雨で濡れないことも嬉しい。
耐震実験コーナーがあり、タイルが剥がれないことも良く分かった。
頑丈な家というポイントからは、申し分のない家だ。
工場見学が終わると、応接室で西山さんがパルフェとドマーニの2通の見積を説明してくれた。
ドマーニはやはり高い。やはりデシオ(三階建て)の金額に戻ってしまった。
さて、パルフェでいくのか、それともドマーニにしてタイルと太陽光を諦めるか。
しかし、タイル外壁を見慣れてくると、サイディング外壁では我慢できなくなってくる。
ある人はヘーベル板に魅入られ、ある人はハイムのタイル外壁に魅入られる。
私はどうやらタイル外壁に魅入られた人間のようだ。
太陽光もどうせなら欲しい。ハイムのステイタスのようなものだから。困った。解決策が見つからない。
頭を冷やすために応接室の外に出ると、西山さんの上司という方が挨拶をして来た。
「トヨタかハイムかで悩んでおられると聞きました」と彼。
「はい。私の周りでもトヨタホームに住んでいる知り合いが多いので、逆に私としてはハイムさんを応援したい気持ちです」
「ありがとうございます。問題は価格ですか」
「そうですね。お互いに納得のいく譲歩ができればいいのですが」
帰りに西山さんと上司の方が駐車場まで見送りに来てくれた。
「よろしくお願いします」と頭を下げている2人の姿がいつまでもバックミラーに映っていた。

 平日 夜8時
工場で受け取った見積書が家庭内で大問題となっていた。 ドマーニに変更したら、初めに目が飛び出そうになったデシオ(三階建て)の金額に戻ってしまったからだ。 構造としては私はパルフェ。妻はドマーニ。母もドマーニが好きらしい。
しかし、金額に関して母は「ドマーニの金額はとんでもない。こんなに借金をするなら、ハイムの話は白紙」と言い出した。
この状況を西山さんにメールで伝えると「お母様とお話したい」と電話が掛かってきた。 そしてこの夜の訪問になった。
西山さんが母を説得しようとして、あれこれと話をする。 母も困惑した表情だ。 パルフェの価格でも高いと思っているのに、更に高い買い物はしたくない。 重い沈黙が続く。
「あなたたちの好きなように決めてくれればいい」と母が投げ出すように言う。 自分が反対している状況がいたたまれなくなったようだ。 しかし、本心でないことは誰にも分かる。
「ハイムの木造のユニット工法(ツーユーホーム)はどう?」と妻が西山さんに相談する。 妻が欲しいのは三角屋根だ。鉄骨構造にこだわりはない。だから 木造ユニットに変更しようというアイディア。鉄骨よりも安いだろうし、外観は鉄骨よりも木造の方が 何倍も妻のセンスに合うようだ。勿論、三角屋根だし。
しかし「鉄骨で頑張らせて下さい」と西山さんは返事をする。
頑張るって言ったって…
確かに、西山さんはパルフェ一辺倒の営業だからな。ツーユーホームは無理だよな。 私は鉄骨でなければハイムの魅力は半減すると考える。
「トヨタはこんなに高くないよ」と私が母に向かって言う。
「なら、トヨタでいいじゃないの」と母。
「頑張りますので、お願いします」と西山さん。
結局、話は平行線のまま終わった。
西山さんが帰った後で、「西山さんは、よく頑張っている」と母が言う。まんざらでもないのだろう。人間心理は複雑だ。

 土曜日 2軒の実邸見学
この日は愛知県下の20箇所くらいでハイムの家を見ることができる内覧会の日だ。
引渡し直前の家を公開している。安城市ではパルフェとドマーニが並んで新築され、その2軒が同時に公開されている。 面白そうなので家族5人で出掛けることにした。
実邸に到着すると、工場で会った西山さんの上司が迎えてくれた。
「パルフェとドマーニで悩んでいらっしゃるそうですね。ここでは2軒並んで建っていますので、比較する絶好のチャンスです」と彼。 確かにこんな光景は住宅展示場でも見れない。 それ以降は、上司の方が母の案内に徹していた。ピタッと寄り添って一所懸命に説明している。
「なるほど。西山さんから、ばあちゃんが難色を示しているという報告が入っているんだな。 だから、こっちには少しも来ないんだよ」 お陰で妻とゆっくり2軒を比較できた。
「確かにドマーニは、かっこいいな」と私。
「そうでしょ」と妻。
子供たちは、スーパーボールすくいで遊んでいる。タダで何回もやらせてくれる。 スーツに革靴の営業マンが金魚すくいの網を親切に子供に渡している光景は、どう見ても不自然だ。
来場記念は博多ラーメンだった。西山さんの上司は、「もっとどうぞ、もう一つどうぞ」とラーメンを 沢山くれた。出来ることは何でもしようという思いが伝わってくる。
車まで見送ってくれた。途中で「あそこにツーユーホームの実邸が見えますよ」と妻に話しかける。
本当に私たちの状況を良く知っているのだなと感心する。
車をスタートさせると、いつまでも頭を下げている彼の姿がバックミラーに映っていた。デジャブのような光景だなと思う。
少し離れた所からドマーニをもう一度見る。
「ばあちゃん、ドマーニはどう?」と聞くと
「いいねぇ」と母。
上司の方の努力の成果かな。

 トヨタホームのプラン 二回目
実邸を見た日の夕方、佐藤さんが来た。
彼の話はいつも的確で分かりやすい。私は彼と話をするのが好きだ。
トヨタとハイムのプランはアイディアは似通ってきたけど、間取りは大きく異なる。
母は、ハイムとトヨタのプランがごっちゃになってしまっているようだ。
「お風呂がここに来ちゃったんだね」と母。
「トヨタの案では初めからここだよ。ばあちゃんが覚えているのはハイムのプラン」と私と妻が口をそろえて言う。
母ほどではないけど、私も妻も時々プランが混線する。 気になっていた地盤改良に関して聞いてみる。
「トヨタさんは表層改良工法ですが、ハイムだとSMD杭工法です。 ハイムのように杭を打った方が安定すると思うんだけど…」
「勿論、トヨタでもSMD杭工法はします。ただDavidさんの土地は表層改良工法で大丈夫です。 オーバースペックな作業に余分なお金を払う必要はないと思います」という返事。
ハイムもトヨタも同じ鉄骨ユニット工法なので、建物の重さは同じくらいだと思うけけど、 ハイムはしっかりやりましょうと言い、トヨタはそこまでしなくてもと言う…
どちらが正しいのだろう。ハイムは全面タイルだから重たいのかな…
「全面タイルは、やっぱり無理なんだよね?」としつこい私。
「実は、つい最近になって全面タイルができるようになったという連絡が入りました。でもまだ実績もないので 不安です」と非常に正直なスタイル。
「タイルは工場で張るの?」
「いえ現場でしか張れません」と彼。
ハイムは工場でタイルを全部張ってしまう。どうも家自体はハイムの方が上のようだな。 問題は、それがオーバースペックかどうかだな。
佐藤さんのプランも説明を受けていると、問題点が見つかる。 手直しして欲しい箇所を明確にする。 「結構煮詰まってきたね」
「はい。次回は最終のプランと最終の価格を持って来れると思います」
「スムースにプランも出来たしね」
「はい、Davidさんのアイディアも明確ですので助かりました」
それは…、西山さんと苦労して考えたプランが頭にあったからだなと思う。
「じゃあ、最終の見積書を期待しています」
佐藤さんは、一週間後の土曜日に最終プランを持ってきてもらうことになった。 プランと見積が揃ったところで、ハイムかトヨタを選ぶことになる。
「決着は間近だな」と思う。

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