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第六週目 (めまぐるしい六週間)
2005年5月15日の週
日曜日 夕方
トヨタホームの佐藤さんが来た翌日。
西山さんとの打ち合わせ。
細かい打ち合わせが終わってから、西山さんが言い出す。
「ハイムかトヨタかどちらかに決めて欲しい」
「土曜日のトヨタホームの話を聞いた後で判断するよ」と私。
しかし西山さんは、トヨタのプランや最終価格を見る前にハイムにするかどうかを決めて欲しいようだ。
丁寧に挨拶をしてから帰って行った。
水曜日 朝
西山さんの携帯に電話をする。
「ハイムさんで出せる条件を教えてほしい。その内容を聞いて家族で再度考えます」と伝えた。
木曜日 夜
電話では話せないので、直接会いたいということで西山さんが来る。
「Davidさんの最終希望をDavidさんの方から言ってほしい。
これならハイムに決めるという条件を教えて下さい。
それで会社に掛け合います」と西山さん。
「えっ、納得できる条件ならば、トヨタとは関係なくハイムと契約してほしいっていうこと?」
「はい」
「でもトヨタが来るのは、明後日だよ。時間的に無理じゃないの? それに直前に断るのはマナー違反じゃ…」
「是非、お願いします。頑張ります」
彼としては、私がトヨタとハイムを天秤に掛けて二者択一で選ぶのではなく、
ハイムを単独の価値で判断してほしいと言っているのだ。
こちらがハイムの家を気に入っていることを理解した上での発言だ。
彼にはそう言うだけの権利があることも分かる。努力してプランを作ってきたのだから。色々と動き回り、また素人の
私たちに多くの知識を教えてくれたのも彼だから。
トヨタの佐藤さんには今まで3回しか会っていないが、西山さんと会った回数は数え切れない。
だから、彼の気持ちを理解することはできる。勿論、トヨタの最終案をみてから判断すると、突っぱねることもできる。
私はしばらく考えてから、「分かりました」と答えた。
西山さんは普段は穏やかで自分を主張しない性格だけど、この日は彼の決意を感じた。
「西山君、やるじゃないか」と、彼が帰った後でつぶやく。
「そうね。決着するのに良い時かもしれないね。検討期間が永遠に続くわけではないから」と妻が言う。
ハウスメーカー選定が最終段階に来たことを実感する。
金曜日 朝
西山さんの携帯に電話をする。「タイプはドマーニ。条件は…」とこちらの希望を伝えた。
(条件の内容に関しては、西山さんと一切口外しない約束をしています)
金曜日 夕方
携帯電話が鳴る。西山さんからだ。
「Davidさんの条件通りでOKです」と西山さん。
「ありがとう。これからよろしくお願いします」と私。
「ありがとうございます。頑張ります」と彼。
しばらく考えてから、佐藤さんに電話を掛ける。
「佐藤さん、明日来てもらう約束だけど、こんな直前で申し訳ない。ハイムに決めました」
「Davidさん、本当ですか? 明日、私のプランを説明しますから、判断はその後で…」と彼。
「本当にごめん、後戻りできない。ぼくは佐藤さんの営業スタンスやアイディアはとても好感を覚える。
でも既に決めたことなので許してほしい」
「そうですか…ハイムを選んだポイントは?」
「タイルかな。タイルを見ていると欲しくなるんだ。トヨタを断っておいて、勝手な言い方かもしれないけど、
佐藤さんに担当してもらって本当に良かったと思う。一生に一回の買い物だから次が無いのが残念だけどね」
「分かりました。連絡いただいてありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
辛い電話を切ってから思った。 「西山さんと佐藤さん、いい営業に担当してもらった…」
金曜日 夜
契約の夜。
何枚もの書面に署名・捺印する。
私たち家族も西山さんも緊張の糸が切れたような気分。
西山さんに今までの礼を言うと、
「これから家の完成までが一番大切な時です」ともっともな意見。
こちらも、しっかりやろうと気を引き締める。
「では明日からプランを更に具体化しましょう」と西山さん。
「明日もよろしくお願いします」と私たち。
据付が8月31日。完成が10月5日。契約書に書き込まれた予定だ。
契約まで息切れするような毎日だったが、これからの数ヶ月間も休む暇のない日々になる予感。
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